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『 砥石に見た日本の心〜「緑の研修生ニュース」群馬取材 』
1月16日、「緑の研修生ニュース」の取材で群馬県神流川(かんながわ)森林組合を訪ねました。全国的に大雪の被害が相次いでいた時期でしたが、幸い雪の気配はなく、現場が近づくにつれ、曇りがちだった空にも日が差してきました。
このあたりでは、カーブの内側だけでなく、外側にも刃がついている特殊な鎌が使われています。この諸刃の鎌は「新勝流」と呼ばれ、柄を接続ポールに繋ぐと地上にいながらにして7mくらいの高さまで枝打ちできるという優れものです。効率的な反面、常に上を向いたまま作業するため大変首が疲れるとあって長続きしない人も多いそうです。この個性的な鎌についてはまた別の機会に触れるとして、今回はこの鎌を持って現場に現れたこの道45年という丸山さんと、丸山さんと共に神流川森林組合で指導員を務める高橋さんについて書きたいと思います。
高橋さんが腰に着けていた袋には、一風変わった砥石が入れられていました。かなり磨り減っています。聞けば、元は2..5cm四方×20cmくらいの大きさだったものが、約10年の歳月を経て1cmほどの厚さにまで磨り減ってしまったのだとか。ただ薄いだけではありません。
「砥石が薄くなったら、接着剤で板を貼り付ければいい」
という若いころの先輩の言葉に従い、かまぼこ板のような板を貼り付けて厚みを持たせ、大切に使い続けているのです。「これならあと2年はもつな」とのこと。
昔は短くなった鉛筆を継ぎ足したりキャップを付けたりして使い続けたものですが、今となってはそんな光景もなかなか見られなくなりました。そんなご時世にも、こんな工夫が受け継がれていたなんて!「もったいない」という気持ちを大事にしてきた古き良き日本人の本領発揮という感じで、なんだか無性にうれしくなりました。
「若い時分は先輩たちはいちいちめんどくさいことを言うなと思ってたけど、自分が年寄りになってみると、その通りだったと思うようになりました」という高橋さん。「だから、自分も若い研修生たちに自分の伝えられることはきっちり伝えたい。自分の若いころとは違って、今の研修生たちは、とても素直で教えたことをどんどん吸収してくれる。そんな姿を見ていると、自分もうかうかしていられないなと刺激になりますね」と、緑の雇用によって活性化した現場の様子を語ってくださいました。
ところで、「緑の研修生ニュース」では、今年度から私が匠に森林の仕事を習うシリーズがスタートしたのですが、この日は丸山さんに間伐を教えていただきました。
「私は自己流だから」と、謙遜しておられた丸山さんですが、その指導ぶりたるや鮮やかなものでした。確かに、テキストの内容とはズレがあるのですが、とても実践的なのです。例えば、これまで私はチェーンソーでの間伐を2度経験(といっても切った木は2本だけですが・・・)していますが、2度ともがっぽりと大きな受け口を作ってしまいました。原因は、水平切りと斜め切りの先が思うように一致しないため、どんどん切り進んでしまったこと。半信半疑で私も丸山さんの方法に従ってみたところ、不思議なことに、いつもあれだけ苦労していた受け口を一発できれいに落とすことができたのです!
とはいえ、その後の作業はそんなにスムーズには行きませんでした。直径30cmほどの杉の重心は明らかに斜め下方に向かっていますが、その方向には車道があります。なので、危険でもあり、作業効率も下がるため、反対側の斜め上方に倒すことにしました。
追い口を入れた後、初めて楔を使いました。木に背を向け、右手を振り子のように使って斧の峰で楔の頭を打ちます。1・2・3・4・5・・・・・・・と、10まで数えたのですが、木はビクともしません。「枝の重み」って半端じゃないんだなと実感するとともに、重心を見極めて倒すことがいかに理に適っているかということも身をもって感じました。それから、さらに7・8回は斧を振るったでしょうか。
「ミシミシいってきたよ」
という声に、その場を離れると、木はじりじりと回転しながら、なんと受け口方向より45度ほど下方に倒れ、「かかり木」になってしまったのです。あっちゃー。
残された切り株を見て、丸山さんが解説してくださいました。原因は、受け口を作った際に水平切りの刃先側を1cmほど深く入れすぎてしまっていたこと。そのせいで、そちら側の「つる」が弱く、もちこたえられずに反対側に倒れてしまったのです。「つる」の微妙な残し具合が、いかに伐倒方向に影響するかよ〜くわかりました。
その後、丸山さんと研修生のふたりが、尺棒にアルミ鉤をつけた道具と人力で回転させながら、かかり木を外してくれました。呼吸を合わせて、全力で引いたり押したりしてくださる姿は大変力強く、感謝するとともに、林業がもともと男の仕事だったというのも頷けるなと感じました。
そんなこんなで、今回も現場で渋い光を放つ匠たちに出会うことができました。研修生たちが、口々に「先輩のようになりたい」というのも、ナットクです。
葛城奈海さんのホームページ http://www.katsuragi-nami.com
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