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『 愛媛で見た、日本の進むべき道 』
『緑の研修生ニュース』改め、『緑の雇用ニュース』の取材がいよいよ始まりました。最初の訪問先になったのが、愛媛県の松山から車で1時間ほどのところにある久万高原町。ここで複層林を育成している匠の岡信一さんを訪ねました。
林に一歩足を踏み入れて感じたのは、「賑やかさ」です。これまで私は、針葉樹の人工林といえば、ほぼ樹高の揃った森林しか見たことがありませんでしたが、ここではかなり様子が違います。同じ杉の木でも、いろいろな成長段階のものが入り交じっているので、おじいちゃんから子どもまで大家族が同居しているような賑わいがあるのです。
岡さんによると、もっとも古いのは明治時代に曾おじいさんによって植えられたという、樹齢126年の巨木。これを含めると5世代の杉が一堂に会しているとのこと。そればかりでなく、よく見れば桧も混じっていますし、さらにはケヤキ、クリ、カシといった広葉樹も本数は少ないながらも生えています。驚いたことに、これらの広葉樹は、例えば家を建てる時の材や家具、農具という形でそれぞれの材質に合わせ、文字どおり「適材適所」で利用するために、意識的に残したというではありませんか!もともと針広混交林こそ理想的な姿ではないのかと考えていた私は、早くも岡ワールドに引き込まれてしまいました。
岡さんの話は続きます。あるとき、「地元の小学校を地元の木で建てよう!」と岡さんが提案したところ、周囲から大反対されたそうです。私にはとっさに理由が思い浮かばなかったのですが、聞けば、「都会と同じように鉄筋コンクリートで建てることこそ地域が発展していることの証」という感覚で、木造校舎は敬遠されてしまったとのこと。しかし、岡さんは諦めずに説得を続け、ついにその夢を実現。一度、木造校舎が造られてからは、周囲もその良さを認め、以後反対の声も聞かれなくなったそうです。
常々、「成田空港を木造に!」と考えていた私は、このエピソードにも感動しました。話が少し逸れますが、私がそんな風に考えるようになったのは、今年の2月にコペンハーゲン空港で衝撃を受けてからです。床や壁が落ち着いた色調の木で統一された空間にはなんとも心癒され、トランジットのための長い時間もまるで苦になりませんでしたし、さらにはデンマークという国家の品格さえ感じました。それにひきかえ、我が日本は……。国土の70%を森林に覆われた「森の国」であるにも関わらず、国の玄関ともいえる空港にその片鱗を感じさせる空間はありません。もしかしたら、大多数の日本国民も、岡さんの提案に反対した地域の人たちと同じような発想だといえるのではないでしょうか。
移動中の車の窓から眺めたその木造校舎は、古ぼけたイメージとは程遠く、「あんな学校に通えたら、いいなぁ」と感じさせる、温もりとお洒落さを兼ね添えた素敵な建物でした。
県森連の方の案内で、帰り道、松山市内にある愛媛県武道場を訪ねました。ここでは、天を突くような「城」を思わせる立派な建築に、度肝を抜かれました。地元の大島石を石垣のように積み上げた上に、愛媛県産の杉を惜しみなく使った(並んだ太い柱はギリシャ神殿のようでもある)個性的な建築、屋根にはといえば、やはり地元の菊間瓦をびっしりと32万枚。圧巻でした。実際、日本武道館と並ぶだけの規模もありますから、これぞ世界に誇る武道場といえるでしょう。
一戸あたり500円の森林環境税を、高知、岡山に続き、全国に先駆けて導入したという愛媛県。その森林環境に対する骨太な姿勢を目の当たりにし、日本がこれから進むべき道を示唆してもらったようで、なんだかとても勇気づけられたのでした。
 
葛城奈海さんのホームページ http://www.katsuragi-nami.com/
◎葛城奈海さん出演の某出版社TVCMがオンエア中だそうです。もしテレビで見かけたら「森林の担い手ネットワーク」のメッセージボードにコメントを投稿してくださいね。 |