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「緑の雇用」総合ウェブサイト |
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2007.OCT |
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東北新幹線をくりこま高原で下車した私たちの目に、まず飛び込んできたのは、空飛ぶ雁の群れでした。美しいV字型を描いたり崩したりしながら、数十羽の群れが次々と空を渡っていきます。
ロケバスで田んぼの中の道を走り出すと、今度は、刈り取りを終えたばかりの稲が干してある様子に目を奪われました。稲の干し方には地方によって色々個性があるものですが、ここでは、人の背丈ほどの棒の周囲をぐるっと取り囲むように稲を重ねてあり、遠くから見ると、まるで蓑を着た人がたたずんでいるみたいです。それが何十も林立する姿は、独特な風情を醸し出していました。 |
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| 今回の取材は、TBSラジオのガイダンス特番と『MIDORI PRESS』の合同チームです。毎週放送されている『ちょっと森林のはなし』は4分ほどのミニ番組ですが、ガイダンス特番は30分という「ちょっと」ではない森林の話。しかも、かねてからずっとお会いしたかった『森は海の恋人』をスローガンに活動する牡蠣漁師の畠山重篤さんにインタビューできるとあり、私としても、いつも以上に気合が入っていました。 |
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まず訪れたのは、「もくもくハウス」。ここでは『MIDORI PRESS』の「葛城奈海の森林の暮らしレポート」用に、杉矢羽の小物入れを制作しました。パーツから接着剤に至るまでキットがそろっているので作業自体はあっさりしたものだったのですが、初めて見る杉矢羽の美しさには心を奪われました。
杉矢羽というのは、地元津山杉の集成材を矢羽の模様になるように加工したもので、これを利用して作られたテーブルウェアや小物は、どれも柔らかな風合いでお洒落なものばかり・・・・。値段も手ごろとあって、思わず、たくさんのお土産を買い込んでしまいました。 |
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そして翌日、ついに畠山さんとの対面です。畠山さんについては、あらためて説明するまでもないかもしれませんが、「豊饒の海」だったはずの気仙沼で牡蠣が獲れなくなった原因を探すうち、湾に流れ込む大川上流の森が荒れていたことに気付き、漁師仲間とともに広葉樹を植える活動を続けてきた方です。
待ち合わせたのは、畠山さんの植林活動を陸の側から支えた農家、小野寺寛さんのお宅。小野寺さんは、農薬や化学肥料を使う農業に疑問を感じはじめた頃に「森は海の恋人」なるフレーズに出会い、自身の農業のスタイルも変えるとともに畠山さんと手を取り合って、「ひこばえの森」を作る活動を続けてきたそうです。
小野寺さんのお宅で、放し飼いの鶏が元気に動き回っているのを見た私は、その瞬間、小野寺さんが、環境にも人にも優しい、極めて「健全な」農業をされていることを直感しました。
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1万本の豊かな広葉樹の森をめざす「ひこばえの森」。 |
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小野寺さんはシティーボーイ風、畠山さんは素朴な感じと、一見対照的なおふたりでしたが、共に問題意識を強く持ち、圧倒的な行動力で前に進んでいくところは共通しており、意気投合されたのだろうなと思います。おふたりとは「ひこばえの森」でもある矢越山の山頂まで登り、360度開けた視界の中で、田んぼの中を流れる大川の遥か彼方に気仙沼湾を見渡しながら(実際は霞んでいて、あまりはっきりとは見えませんでしたが・・・)、お話を伺いました。
「ひこばえの森」は古いところでも植林してから15〜16年とのことでしたが、イガ栗が落ちていたり、七竈の実が真っ赤に色づいていたり、キノコが生えていたり・・・。やっぱり広葉樹の森は、変化に富んでいて楽しいですね。海の生き物にとって広葉樹の森が大切なのは、落ち葉が堆積することによって栄養たっぷりの腐葉土層ができ、そこに浸透した雨が川となって流れ下ると、海にたくさんのプランクトンが供給されるからなのだそうです。 |
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矢越山の山頂で小野寺さん(中央)と畠山さん(右)と。 |
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続いて、畠山さんに気仙沼の漁場へと案内していただきました。畠山さんが牡蠣を養殖している湾内は、鏡のように静かな水面に覆われており、海を覗くと澄んだ水を通して天然の牡蠣や二枚貝が岩にはり付いている様子が手に取るようにわかります。奥さんと、もうすぐ3歳になるお孫さんと一緒に船に乗り、少し沖合い(といっても、まだ湾内)の牡蠣筏まで連れて行ってもらいました。
驚いたことに、牡蠣を吊り下げる筏は、直径10数センチほどの杉の間伐材で組まれていました。適度な太さでまっすぐなこと、足が滑りにくいことなどから、杉の間伐材が適しているのだそうです。また、海底の貝を獲ったり、船を筏などに寄せるために使う道具は、それぞれの木の特性に合わせた梓(弓の材料)などの広葉樹で作られており、ここでも森と海との深い繋がりの一端を垣間見た思いがしました。
筏横では、目の前で海から上げたばかりの牡蠣や帆立をごちそうになり、また、海水を漉した褐色の「濃厚プランクトン」まで飲ませていただきました。どれも、思いっきり「海の味」がしました。 |
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牡蠣のごちそう(プランクトン)を私も味わってみました。 |
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| 畠山さんによると、海水には大気中の60倍の濃度のCO2が溶け込んでいるのだそうです。「それを植物プランクトンが酸素に変えてくれている。だから、植物プランクトンがいなければ、地球の温暖化は、今より遥にものすごい勢いで進んでいたはず」と聞き、これまでほとんど意識したことの無かった「海の森」の存在と、その偉大さを思い知ったのでした。牡蠣が餌にしているのも、この植物プランクトンです。畠山さんが、牡蠣を「森のしずく」と呼ぶのも、心の底から頷けました。 |
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お話を伺って印象的だったのは、畠山さんのスケールの大きさです。自らフランスやスペインに視察旅行に訪れて研究し、地球的、というより宇宙的規模で物ごとを考え、それでいて頭でっかちになってしまうことなく、足元から着々と行動を起こしていく、そんな姿勢に強く惹かれました。まさに、私が理想とする「Think globally, act locally」(グローバルに考え、足元から行動する)を地で行っています。
今回の取材でもうひとつ心に残ったのが、宮城の関係者のみなさんの熱意と心尽くしです。一時期は実現が危ぶまれていた畠山さんへの取材も、そんな方々のご尽力のお陰で実現しました。また、「緑の雇用」をなんとか発展させようと、いろいろとアイデアを出してくださる県森連の方の熱意には、私自身も触発されるものがありました。
さらには、旬のアケビを届けてくださったり、栗拾いをさせていただいたり、特産の鯨をご馳走になったり・・・。さまざまな方からご厚意の数々を受け、広葉樹の森から染み出した水が注いだ海のように、身にも心にもたっぷりと栄養をいただきました。お陰で私も、気仙沼の牡蠣のように「ふっくら」したかもしれません。お世話になった皆さん、本当にどうもありがとうございました! |
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