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葛城奈海のがんばれ林業
葛城奈海の木もれ日の部屋

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東へ西へ 2007.DEC
東京ガイダンスに向けて放送される、1時間のラジオ番組『ちょっと森林のはなし』スペシャルの収録のため、12月中旬、岐阜を再訪しました。前回訪れたのは真夏だったので、今度はがらりと違う雪景色かと思いきや、高速を下りても雪などどこにも見当たらず、冬晴れの穏やかな景色が広がっています。最初に訪れたのは、美濃市にある岐阜県森林文化アカデミー。今回のスペシャル番組の主役は、白鳥林工協業組合の研修生山田さんです。普段は郡上市の白鳥林工協業組合に勤めている山田さんですが、この日は県内の研修生が一堂に会する集合研修に参加していたためアカデミーで取材することになりました。
ワイヤー継ぎの研修風景。
研修棟では、20代から60近い方まで21名の研修生がワイヤーの継ぎ方の研修に励んでいました。もともと岐阜ではIターンの研修生を積極的に受け入れていたそうですが、ようやく一人前になりかけてきたところで、親の面倒を見るために故郷に戻らざるを得なくなった人が多かったため、現在では基本的に地元出身者を採用しているそうです。指導するのは、林業歴40年以上という日下部さん。架線など林業のさまざまな現場で使われているワイヤーですが、こんなに近くでまじまじと眺めたのは初めてです。今回使用していたのは8ミリワイヤーでしたが、1本の麻縄を軸に6本の細いワイヤーを絡めて作られていると知り、まずびっくり。その切断に挑戦してみたのですが、文字通りまるで刃が立たず、その頑丈さにまたまたびっくりでした。研修では、この6本の細いワイヤーをばらしたり絡めたりしながら、全体として繋げる方法を学習していたのですが、どれも同じように見える6本のワイヤーを巧みに操る日下部先生の素早い指の動きには、私なんぞはとても頭がついていきませんでした。研修生のみなさんも、悪戦苦闘しながら一生懸命に取り組んでいました。
森林文化アカデミーで研修生たちと。
大学で林学を学び、環境問題への関心から研修生になったという山田さん。日本の森林の将来について、「拡大造林のときに一生懸命植林してしまったけれど、あまりにも林道から遠く、山主さんの境界線もわからなくなっているような場所は、広葉樹に戻していけばいいと思う」という言葉は、私としても大変共感できました。

午後には郡上市に移動し、今度は白鳥林工の理事長夫妻をはじめとする方々にお話を伺いました。理事長の美谷添さんご夫妻は、研修生たちを本当の息子のように大切に思っていらっしゃいます。『MIDORI PRESS』の取材でお話を伺ったときも美谷添さんご夫妻のそうした姿や、林業に対する既存の枠にとらわれない発想や取り組みに大いに感銘を受けたのですが、今回改めてそうした思いを強くしました。
(詳しくは、『木もれ日の部屋』 9月号をご参照ください)

翌朝、今度は夜明け前から現場に向かう作業員のみなさんの車に同乗し、通勤風景を取材しました。案内してくださったのは、研修生OBの津島さんです。津島さんとは過去になんどか間接的なコンタクトはしていたのですが、実際面と向かってお話ししたのは初めてでした。小雨の降る生憎のお天気でしたが、声が大きくバイタリティーに溢れ、ムードメーカー的存在の津島さんのお陰で、夜明け前から明るい車内になりました。いつも通り、途中で親方の高田さんをピックアップ。高田さんは、理事長の美谷添さんの理念を現場で体現し、白鳥林工の歴代の研修生から慕われ尊敬されている山師の大ベテランです。その高田さんと共に向かった先は、分水嶺を越えて日本海側に少し下った作業現場。車を降りると、足元には10センチほどの雪が積もっていました。高田さんによると、この時期は、雪がたくさん降る現場から順に、雪が来る前に作業を終わらせていく必要があるため、かなり頭を使うのだそうです。

そんなこんなで、今回は現役研修生の山田さんを中心に、彼の勤める白鳥林工やその周辺の岐阜県の林業関係者のみなさんにお話を伺いました。この場ではなかなか紹介しきれませんので、詳しくはぜひ1月27日(日)オンエアの『ちょっと森林のはなし スペシャル』をお聴き頂ければと思います。
ラジオ収録風景。
この日、私はその足で東京を素通りし、『MIDORI PRESS』の取材のため茨城県に向かいました。名物のあんこう鍋で腹ごしらえし、翌日取材させて頂いたのが、筑波山の北側に位置するつくばね森林組合の木崎組合長と、水車で挽いた杉の葉でお線香を作っている駒村清明堂。

木崎さんのお屋敷は、企業のポスター撮影などにも使われるたいそう立派な瓦屋根の門と、堂々たる茅葺きの母屋などから成っていました。驚いたことに、茅葺きを下から見上げると、目にも美しい8層になっているではありませんか!白川郷をはじめこれまで茅葺き屋根はいろいろ見てきたつもりですが、着物でいうところの十二単のような、こんな芸術的茅葺は記憶にありません。それが、外からは目につかない、いわば襦袢のようなところに施されているところがまた心憎かったです。
木崎さんのご自宅。立派な茅葺きの家です。
茅葺き屋根を下から見るときれいに8層になっています!
駒村清明堂では、直径5メートルくらいはありそうな水車が、筑波山麓を流れる恋瀬川の水で、ごとんごとんと力強く回っていました。水車小屋の中では、歯車によって8本の杵を2本ずつ時間差で浮かせ、規則正しく落下させて杉の葉を粉にしています。おおむね1日半ほどで挽きあがるそうなのですが、「うっかり止めるのを忘れて、2日とか3日とか搗き過ぎてしまうことはないのですか?」と質問したところ、「ありません」とのこと。というのも、搗きあがりのタイミングは、例えそれがどんなに夜中でも、「音」が教えてくれるのだそうです。つまり、杉の葉に含まれる水分や、その日の湿度によって、粉を挽くのにかかる時間は微妙に変わってくるそうなのですが、杵の下には金属が取り付けられているため、仕上がりに近くなるにつれて音が徐々に高くなっていき、適当な頃合になったことを告げてくれるのだとか。
水車で杉の葉をひいてお線香を作っている駒村清明堂さん

お線香の材料は、杉の葉なんです。
ところでみなさん、一般的なお線香は、輸入ものがほとんどだって、ご存知でしたか?お仏壇のある家では、お線香の煙というのは慢性的に吸ってしまいますから、もしその成分に有害なものが入っていたら、体には負担になりますよね。駒村清明堂のお線香は添加物を一切使わないことから、この点でも安心して使えますし、実際、アロマテラピーのように心休まる優しい香りがしました。ご主人の駒村さんは大変お話の上手な方で、「材料の杉の葉は、20年や30年の若いものではだめなんです。それなりに年齢を重ねないと、いい味がでない。人間と同じですね」といたずらっぽく笑っていました。「水車を使ってゆっくりゆっくり粉を引く。それがいいんです」という駒村さんからは、効率至上主義に押し流されずにポリシーを貫く、男の誇りのようなものが伝わってきました。
筑波の山の水で回る水車。
水車小屋の中では大きな歯車が回っています。
できたばかりのお線香。
東京から近すぎるせいか、あまり意識されていなかった感のある茨城県でしたが、今回訪れてみて、意外な味わい深さに驚きました。木崎さんの仰った「ここは桃源郷だぁ。頭が痛くなったら、また来いや。ここに来たら、頭がびょーんと延びちまうぞ〜」という言葉が妙に心に残ったのは、慌しい毎日に追いまくられているせいでしょうか……。

東奔西走しているうちに今年も終わろうとしています。北海道から九州まで、あちこちの森林を回らせて頂き、忙しい中にも充実した一年でした。各地でお世話になったみなさんのおひとりおひとりに、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当に、どうもありがとうございました!

岐阜県森林文化アカデミーのホームページ
http://www.forest.ac.jp/

白鳥林工協業組合のホームページ
http://www.shirotori-rinko.or.jp/

つくばね森林組合のホームページ
http://www.camp-tsukubane.com/kumiai.htm
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