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葛城奈海の木もれ日の部屋

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魅惑の大分ふたたび 2008.FEB
松の内が明けるや否や、TBSラジオと『MIDORI PRESS』の合同取材チームは、大分へと飛びました。私にとって大分は、匠から下刈と間伐を教わるVTRを撮影して以来、2年ぶりの再訪です。前回味わった人情の数々と、匠と交わした約束「大分の団子(だご)汁を食べさせたい」「食べに来ます!」が忘れられず、ずっと温めてきた再訪の念願がついに叶いました。
今回の内容は、いつもと一味違ったイベントの取材です。と同時に、私自身もその参加者でもありました。まず、初日は集合研修の一環として平成19年度の研修生約40人と共に国東半島の両子(ふたご)山に登り、2日目はOBも含めた研修生とその関係者約100人が一堂に会して安全大会が開催されました。

初日の両子山は、匠の高田好則さんに有用広葉樹について教えて頂きながら標高720mの山頂を目指しました。集合したのは、中腹にある両子寺の駐車場だったのですが、そこに赤と緑の揃いのユニフォームに身を包んだ40人の集団がたむろしているのは、なかなか見応えがある光景でした。

駐車場に集合したH19年度の研修生たち。
両子寺の境内から登り始めます。
挨拶を済ませて、いざ出発。私にとっては、久しぶりの、大好きな山歩きです。コース初盤は「針の耳」「鬼の背割」などと名づけられた天然の難所をアスレチック感覚で越えつつ、変化に富んだ山歩きを楽しみました。高田先生は「これはカヤです。碁盤の材料にもなる木ですね。このように葉っぱは先が尖っていて痛い。でもいい匂いがしますから、触ってみてください」という具合に、目に付く植物の名前や特徴、用途などを次々に教えてくださいます(カヤは針葉樹なので、番外編)。
急斜面の岩盤を、鎖を頼りに登ります。
ここは「鬼の背割り」です。
指導中の高田先生。
山道を歩くうちに、大きな綿毛がたくさん落ちているのに気付き、拾い上げつつ「これはなんですか?」とお聞きしたところ、「テイカカズラです」と即答されたのには舌を巻きました。それだけでなく、「この辺にあるはず・・・」と辺りを見回し、植林された杉の1本を伝っているテイカカズラをその場で見つけてしまったのです。「風車のような花びらを持つ、きれいな花を咲かせます」と聞いて、ますます関心が深まりました。が、こんな調子で、足を止めてばかりいるとなかなか山頂が近づいてこないので、途中から歩きに専念することに。山道は、次第に急になり、それとともに研修生たちも無口になり、汗を滴らせながら1時間ほどで意外と手ごわい両子山」に登頂。360度の視界が開けた山頂では、国東半島の山々を見渡しながら、心地よい風に吹かれました。
綿毛がかわいい
テイカカズラの種子。
赤と緑のユニフォームが
森林に映えます。
ところで、そもそもこうして有用広葉樹の研修が行われた背景には、大分県ならではの特筆すべき事情がありました。というのも、鹿の食害対策などの理由から、平成3年の台風で風倒木の大きな被害が出て以降、「風倒木の跡地に植林する際には、広葉樹を2割植えると補助金が出る」という制度が始まったそうです。しかし、広葉樹を植林しても周囲の草木に負けてしまうことが多いため、元々生えていた有用広葉樹があれば、極力それを活かした方が効率的です。ところが、そうやってせっかく広葉樹を残しておいても、後から作業した人が誤って伐ってしまうという事態が立て続けに起きたため、「広葉樹を見る目」を養ってもらおうと、この講習が開かれたとのことでした。
途中でみつけた
キクラゲ。
山頂まで急な登りが
延々と続きます。
両子寺から約1.5kmの登りでした。
久しぶりの伐倒に、
思わずニッコリ!
下山後、研修生は解散しましたが、私にはもう一仕事待っていました。ラジオ用に高田先生のインタビューと久々の伐倒です。前回伐倒してから2年近くして経っていたのでちょっと不安でしたが、夕闇が迫ってきたこともあり、高田先生が要所で手を貸してくださったお陰でスムーズに行きました。ひとつ鮮烈に心に残ったのが、矢(楔)を打つタイミングです。1度矢を打てば、木の上部は打たれた向きに傾きますが、ツルが残っている限り反作用でしなりながら戻ってきます。このときに2度目の打ち込みをすると、ちょうど力が打ち消しあって効果的ではありません。なので、打ち込みのタイミングは、その一瞬後、つまり、木が再び矢の向きにしなろうとする瞬間だというのです。
これまでこうしたタイミングというのを意識したことがなかったのですが、聞いて納得、まさに武道の「間合い」や呼吸と一緒です!昼間のぽかぽか陽気とうって変わった冷え込みに、伐倒の前はガタガタ震えていたのですが、このときは感動のあまり寒さもどこかへ吹き飛んでいってしまいました。
一夜明け、大分県林業会館で開催された安全大会は、「技術の継承と災害ゼロを目指して」をテーマに、山の神の神事、全森連の田代部長による安全講話、昼食を挟んで私の講演、最後に森林の匠・研修生のトークショーというメニューでした。
研修生の代表が安全宣言を誓いました。
大分県下の80名以上の研修生・OBが一堂に会するのは初めてのこと。
きちんと祭壇をしつらえて行われた山の神の神事は、チェーンソーや呼子、鉈などもお祓いして安全を祈願するというものでしたが、同時に、ふだん恵みを頂いている山、すなわち自然への感謝の念を表すものでもあると思います。私たちは木の命を頂いているという厳粛な事実をついつい忘れがちですが、忘れがちだからこそ、折に触れて自然への感謝の念を思い起こす、こうした神事はとても意味があるのではないでしょうか。技術の継承と同時に、日本人が伝統的に培ってきたこうした精神も、しっかり継承していきたいものです。
大分懸護国神社の八坂禰宜が、安全祈願の神事を執り行いました。
うれしい演出!竹の燭台のやさしい灯りが出迎えてくれました。
私の講演の折に、ちょっとしたサプライズがありました。なんと部屋を真っ暗にし、大分名物の竹を門松状に3本ずつ束ねてステージ両サイドに5組ずつ並べ、そこにキャンドルを灯して私を迎えてくださったのです。地域の特色を活かした粋な計らいに、またまた感激してしまいました。講演では、私が緑の雇用に関わるようになった経緯や、これまでの全国の森林を回らせて頂いた中で印象に残っていることを安全に絡めてお話ししました。
全森連の田代部長による安全講話と、トークショー内での高田先生の話に共通していた印象的なお話があったので、ご紹介したいと思います。研修生が集合研修で一生懸命安全な作業について学んでも、各事業体や組合に戻り、それを実行しようとすると現場の先輩から「そんなことしなくたっていい」とあしらわれて、せっかく学んだことも水泡に帰してしまうケースが多々あるのだそうです。これこそ、慣れからくる油断に他なりませんよね。それが、結局は災害の芽になってしまう。高田先生も声を大にして訴えておられましたが、心当たりのあるベテランのみなさんには、この機会にぜひ「初心」を思い出して頂ければと思います。
最初はちょっと緊張しました。
研修生と匠のトークショー。
仲間のユニークな回答に
会場は爆笑!
そんなこんなで、(出演していた私が言うのもなんですが)県森連の山本さんを中心とした関係者のみなさんの献身的なご尽力のお陰で、なかなか意義のある安全大会になったように思います。こういった試みは、大分一県に留まることなく、全国各地に広がっていくといいなと感じました。
そうそう、2年前の約束は、見事に果たされました。それも、高田先生自ら掘ってきた自然薯を目の前で下ろして下さり、ぷりぷりの団子汁だけなく、生・天ぷらと3つの味を堪能させて頂いたばかりか、断崖絶壁に生え、1年に1mmしか成長せず、雨天や早朝など条件の悪い日にしか採れないという岩茸はじめ、地元ならではの貴重な食材の数々を心ゆくまで楽しませて頂きました。期待を遙かに上回る大分の皆さんの心尽くしに、今回もまた、打たれっぱなしで、ここまでして頂いたからには、私も日本の森林に元気を取り戻すため、いっそう力を尽くさねばと改めて気合が入りました。大分のみなさん、今回もまたたくさんの感動を、本当にどうもありがとうございました!
大分名物の団子汁(だごじる)。
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