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葛城奈海のがんばれ林業
葛城奈海の木もれ日の部屋

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“吉野の里で感じた、新たな息吹 2008.APR
桜咲く奈良の吉野に行ってきました。古今和歌集の時代から歌に詠まれ、長く日本人に愛でられてきた吉野山の桜。それが、ソメイヨシノではないと、みなさんご存知でしたか?恥ずかしながら私は、その名に「ヨシノ」と付くくらいなのだから、吉野山の桜はソメイヨシノなのだろうとばかり思っていたのですが、行ってびっくり、3万本あるというそのほとんどがヤマザクラだったのです。
取材に訪れたのは、東京ではすでに花が散ってしまった4月9日でしたが、吉野山では下千本・中千本はちょうど見頃、上千本はまだこれからという状況でした。桜の下でお話ししてくださったのは、5年前まで県の職員として桜の手入れをしていたという谷口義一さん。谷口さんによると、吉野山が桜の名所になったのは、修験道の開祖といわれる役行者が山上で祈り出した蔵王権現を桜の木に刻んだことに始まるそうです。挿し木というクローンで増えるソメイヨシノとは対照的に、ヤマザクラは交配を繰り返すため実も花もそれぞれ微妙に色合いが異なり、飽くことのない美しさを楽しむことができるとか。「ヤマザクラを見慣れてしまうと、ソメイヨシノは自己主張が強くて厚化粧に見える」との言葉に当初は面食らったのですが、葉の供をするようにして花を揺らすヤマザクラの楚々とした佇まいと、一本一本淡く異なる色づき方に見入るうち、次第にその奥深い味わいに私も引き込まれていきました。
桜の咲き乱れる吉野山にて、谷口義一さんと。
黒滝村では研修生OB梶谷さんの奥さん・加根さんにインタビュー。
平日にも関わらず花見客でごった返す吉野山を後にし、続いて向かったのはお隣の黒滝村です。ここでは、『森林の仕事ガイダンス』などでもチェーンソーアートを披露している緑の研修生OBの梶谷哲也さんと奥さんにインタビューしました。
吉野杉に魅かれて東京から移住してきた梶谷さんは、地元出身の加根(ますね)さんと結婚し、吉野杉の良さをアピールするため、夫婦二人三脚で大変パワフルかつ独創的な活動をしています。このご夫婦については語り出したらキリがありませんので、詳しくは「出来杉計画」のブログに譲りたいと思いますが、この日印象的だったことをいくつか挙げると……。
出来杉計画
http://www.deki-sugi.com/
ひとつは、加根さんの言っていた「地元で育った私にとっては、杉なんてそこら中にありすぎてなんとも思っていなかったのに、東京からわざわざ杉のために吉野までやってきて一所懸命にやっている姿を見て、杉や吉野に誇りを持たせてもらった」という言葉。これぞIターンのひとつの理想像じゃないかと思います。それからもうひとつ、加根さんは元々司会などのお仕事をしていたことから、時には梶谷さんがチェーンソーアートのショーを行う隣りでマイクを持って解説をしたりもするそうですが、そんなときにも「MCによってショーを盛り上げようとか、夫を有名にしようとか、技術を知ってもらおうとかいうことは、次の次であって、私たちが売りたいのは、あくまで『杉』。その良さを伝えるのに最良な方法をいつも探している」。杉へまっすぐで熱い思い。しびれます。
梶谷さんが道端の切り株に彫った作品たち。
今回、梶谷さんの取材は私のたっての希望で、梶谷さんが道端の切り株に直接作品の数々を彫った場所で行いました。フクロウやイヌやアライグマなどなど計20作品以上あったでしょうか。そうやって利益などまるで考えもせず作品を彫っていったところ、その周りに地元の方がいつしか桜の苗木を植えてくれたり、また取材に取り上げられたりするようになったとか。数年に渡って吉野の雨風に曝されてきた作品たちは、今やすっかり周りの自然に溶け込んでなんともいい風合いになっていました。その姿は、吉野に溶け込み吉野の人に幸と刺激をもたらした梶谷さんそのものの姿と重なりました。
取材を終えて
梶谷一家と記念写真。
吉野林業の若きリーダー、中井章太さんに森林の中でお話をお聞きしました。
次いで、山を歩きながら、中神木材の中井章太さんに吉野の林業について伺いました。雨が多く土地が急峻な吉野では、密植し、数多く間伐することによって年輪の詰まった大径木を育てています。伐採後は「葉枯らし」といって葉をつけたまま数か月放置し、水分を抜いて軽くしてからヘリコプターで搬出するという独特な集材を行っているそうです。もちろん、それだけ単価が高い材だからこそできることですが。このとき歩いた山も、足を滑らせれば谷底まで真っ逆さまというくらい険しかったですし、ふと目にとまった切り株が苔生(こけむ)し、その苔の中に新たな杉の命がいくつも芽生えていたことから、いかに雨が多い土地であるか窺い知ることができました。
最後に訪れたのは、吉野森林管理サービスの今西秀光さんのログハウスです。もちろん、材は吉野杉。テラスからは、緑なす山並みの奥に一滴垂らしたピンクの霞のように吉野山の桜を遠望することができました。今西さんは、自ら「森林保安官」と称し、GPSを使って山の境界線を明らかにする活動を続けています。全国的に、いざ山の手入れをしようとしても、不在地主が多く、山の境界がわからないことから手をつけられず、さらに山が荒れるという悪循環が多い中、今西さんのような活動は非常に意味のあることだと感じました。

森林保安官
http://www.hoankan.com/hoankan/
自称「森林保安官」の今西さんのロッジの前で。
今回の取材で特に心に残ったのは、若い世代が森林の中で生き生きと輝いていた姿。吉野という地やそこで受け継がれてきた林業に誇りを持ちながら、ただ受け継ぐことに甘んじるのではなく、それぞれに創意工夫して新たな価値を生み出している、そこに頼もしさと大きな希望を感じずにはいられません。山深い吉野ですが、行く先々で川底の石まで透き通る清流を目にしました。その清しさにも似た新たな息吹を、吉野の里に感じました。
※吉野での取材について詳しくは、5月放送予定のTBSラジオ系列の『ちょっと森林のはなし』を、ぜひお聴きください!

お知らせ:全森連提供ラジオ番組の『ちょっと森林のはなし』のホームページができました。各エリアでの放送局・放送時間もチェックできますのでご覧ください。

ちょっと森林のはなし
http://www.tbs.co.jp/radio/forest/
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