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「緑の研修生」ニュース 奈良県篇
「緑の研修生」の声

「緑の研修生」の声

吉野の林業の伝統を受け継いでいくために日々、研修に励む「緑の研修生」の声を聞きました。

奈良県の中央東寄りに位置する“吉野”は台高山脈、大峰山脈に囲まれ、台風の被害も少なく、気候・土壌条件が林木の育成に最適の条件を備えている。古くから林業が盛んで、豊臣秀吉が大阪城や伏見城の建設に吉野材を用いたことは有名だ。密植・枝打ちの励行による育林技術が発達し、大径木を産出している。
伝統ある吉野林業を受け継いでいくために、研修に汗を流している「緑の研修生」に話を聞いた。



みんなが手を取り合って、林業のことを考えていかなければ。
宇陀市森林組合 辻本陽介さん

辻本陽介さん 環境問題を考えるようになったのが林業転職のきっかけだったという辻本さん。それまでは教育委員会の臨時職員を3年間勤めていた。「宇陀で育ったので、この自然がなくなってしまうのは嫌だなと思いました」という辻本さんは、「森林を守り、環境をよくするのは林業だ」と考え、地元の森林組合の門を叩いた。「小学校から高校まで野球をやっていて体力には自信があったのですが、山登りはまったく別ですね。最初はしんどかったです。チェーンソーも触ったことがなかったので少し恐かったです」と研修を始めた頃を振り返る。今は身体もすっかり慣れ、下刈りや除間伐などの林内整理作業に精を出している。林業の将来について聞くと「材価が安いので放ったらかしの山も多い。林家さんと林業従事者、国が手を取り合って林業のことを考え、よくしていかなければいけないと思います」と力強く語った。


自分の手でいい木を育てていきたい。
都祁(つげ)森林組合 上久保官慶(ひろよし)さん

上久保官慶さん 上久保さんは製材業と農業を営んでいたが、台風の影響等でいい原木が出てこなくなり、材価も下がって困っていた。そこで今度は木を育てる方に徹しようと、製材業を辞め、「緑の研修生」になったという。チェーンソーは製材の仕事で使っていたが、山登りは経験がなかった。「山へ最初に行った日は辛くてね。登るだけで精一杯でした。しかし、半年続けているうちに慣れてきて、山歩きは辛くならなくなりました」という。今は間伐と枝打ちの仕事が中心だそうだ。趣味は釣りで、車で3時間かけて和歌山の海岸までキス釣りに出かけるのが楽しいという。「製材をやっていたので木を見る目はあります。自分の手でいい木を育てていきたいですね」と将来の夢を語る。「自然が好きなんで、山で働くのは気持ちがいいです。秋は紅葉がきれいでした」と新しい仕事に満足しているようだ。


みんなで自然に対する意識を変えていかないといけないですね。
今西木材 吉田直樹さん

吉田 直樹さん 三重県出身の吉田さんは、地元の自動車工場に勤めていたが、「2交代制で夜勤もあり、生活が不規則でした。自動車の排気ガスは地球温暖化の原因にもなるので、少しでも自然の役に立つ仕事に就きたいと思っていました」と林業転職を決心したという。さっそくインターネットで情報を検索し、今の会社に応募した。実際に山仕事を経験した印象を聞くと、「最初は、こんな急な所を登るのかと驚きました。基本的な体力があって、山に入るのが好きでないと続かない仕事ですね。まだ慣れていないから、何が危険かわからない。経験が必要です」と語る。また、「自然との共存の仕方が問われますね。地元の人は、自然に囲まれているのが当たり前なので、その大切さに気づかないことが多い。都会に住んでいた人の方が敏感に感じます。もっと山村と都会が文化交流をして、みんなで自然に対する意識を変えていかないといけませんね」と今の思いを聞かせてくれた。


林業は、きついけど性に合っている仕事です。
都祁(つげ)森林組合 幸田隆史さん

幸田隆史さん 林業は以前から興味があったという幸田さんは、「10年早く始めていたら、もっと身体が動いたのに」と微笑む。研修をやってみて、今まで経験したどんな仕事よりも性に合っていると感じたそうだ。「枝打ちを終えて、林の中が明るく見通しがよくなると何とも言えない充実感があります」と林業にやりがいを感じている。「最初はチェーンソーが重く感じました。夏の暑さもつらかったです。年上の先輩たちが元気に働いているのを見て感心していました」と苦労も多かった。暑いときは無理をせず、マイペースで休憩しながら仕事をしていたそうだ。家には、お祖父さんが手入れをしていた山がある。しかし、お祖父さんが亡くなってからは誰も世話をせず、今は荒れているという。「小学生の頃、お祖父さんに連れられて山に入った思い出があるんです。早く仕事を覚えて自分が世話をしたいと思います」と抱負を語ってくれた。


一軒家に引っ越してガーデニングをやりたいんです。
今西木材 石野貴史さん

石野貴史さん 大阪からIターンで同棲中の彼女を連れて吉野にやってきた石野さん。大阪では医療関係の製造業に就いていた。もともと山が好きで、インターネットで職探しをしているときに吉野で林業就業支援講習があることを知り、20日間の研修に応募した。そこで、今の会社の社長と知り合い、それが縁で入社した。危険な仕事だからと彼女には反対されたが、今は理解してくれるようになった。彼女も、この土地で福祉関係の仕事を探し、働き始めたという。「今は集合住宅ですが、将来は一軒家に引っ越してガーデニングと畑づくりをやりたいんです。小さい山を手に入れて、自分で手入れしていきたいです」と夢もふくらんでいる。この土地に定着して、森林の担い手として生きていこうという意気込みを感じた。

受け入れ側の声

どんな状況でも迅速に対応できる身軽さを身につけて欲しい。
宇陀市森林組合 榎 信仁さん

榎 信仁さん 森林組合に入って26年という榎さん。お父さんが素材業者で、小さい頃から一緒に山に入っていたという。榎さんが指導している研修生は現在1名。マンツーマンで指導している。「山仕事では、自分の身体は自分で守るのが基本。どんな状況でも迅速に反応できる身軽さを身につけて欲しいです。チェーンソーや刈払い機など刃物を使う仕事なので、道具の使い方や使うときの正しい姿勢をしっかり教え込んでいます」という。榎さん自身も、若いときに先輩たちから「ケガと弁当は自分持ち」と、厳しく教えられてきたという。林業を続ける上で大切なことを聞くと、「人と自分のチームワーク。そして木のことをよく知ることです。木の使い方、育て方など木のことを理解しないと次のステップに上がれません」。今の研修生は初心者だが、体格もよく、指示するとてきぱきやってくれると満足そうな顔つきになった。


林業にケガはつきもの。やはりケガがいちばん心配です。
御杖村森林組合 中嶋晃代(てるよ)さん

中嶋晃代 さん奈良県東北部にある御杖村は、面積の90%が山林。中嶋さんは御杖村森林組合で経理全般を見ている。「研修生は、いま2名です。平成15年からだと延べ19名になります」とのこと。研修生は、ほとんどが地元出身者で、みんな顔見知りだそうだ。中嶋さんは購買部も担当しているので、毎朝、買い物に来た研修生と言葉を交わしているという。「チェーンソーの扱い方を相談されたこともあります。山仕事をしたことがないので、詳しい人に聞いてみますと答えました。私も山仕事のことをいろいろ勉強しないといけませんね」と微笑む。「今の林業は男社会。もっと女性が入ってきてくれるといいですね。中にはご夫婦で山に入っている人もいます。そういう人を見るといいなあと思います」と続けた。「林業は何をやってもケガがつきもの。やはりケガがいちばん心配」と研修生を気遣う中嶋さん。夢は、木の良さをみんなにもっと知ってもらうことで、「木には他のものにはない癒しがあります」と語った。


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