
vol28 TOP > 葛城奈海の森林のよもやま話

都会と違って、様々な伝統芸能が今も残っているのが山村地域の魅力です。
Iターンで山村に定着した「緑の研修生」の中には、お祭りのときの獅子舞や笛囃子を習い、
地域にとけ込んでいる方もいらっしゃいますね。
しかし、伝統芸能を後世に伝えるには様々なご苦労もあるようです。
今回、私が訪れたのは、平成21年9月にユネスコ無形文化遺産に指定された
早池峰神楽(岳神楽)保存会の皆さまの練習場です。
北上山地の最高峰である早池峰山は、古くから霊山として信仰の対象となっていました。早池峰山には、4つの登山口があり、かつてはそれぞれに山伏が坊院※を構えていました。岳地区もそうした登山口の一つで、神仏混淆の時代には、新山宮という神社とその別当寺として妙泉寺がありました。 しかし、妙泉寺の方は明治維新の廃仏毀釈の際に廃寺となりました。新山宮は、今では早池峰神社となっています。早池峰神楽は、この妙泉寺に伝わる神楽です。 ※坊院…僧侶の住居のこと。
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早池峰神楽保存会
伊藤金人さんと。 |
昔は4つの登山口、それぞれで神楽が行われていましたが、今残っているのは早池峰山の南西側の岳地区と南側の遠野市、大出(おおいで)地区、東側の宮古市川井地区の3つだけ。保存会の伊藤さんによると「起源は定かではありませんが、文禄4年(1595年)の権現舞の面が今も残っているので、少なくとも500年前には神楽が舞われていたのは確かです」とのこと。
■ 早池峰神楽に使うお面
![]() 子山の神 (こやまのかみ) |
![]() 三番叟 (さんばそう) |
![]() 武内宿禰 (たけのうちのすくね) |
![]() 巨旦 (こたん) |
神楽は、妙泉寺に仕えた門前に住む『六坊職』の人たちによって伝承されてきました。今でも『六坊職』の末裔である6軒と神職に関わる4軒の合計10軒によって保存会が作られ、伝統を守っています。神楽を舞うのは、この10軒の長男だけに許されることなんです!
![]() 週に何回か集まり、 夜遅くまで練習を重ねています。 |
保存会の会員は16名、最年長は76歳で最年少は20歳。まだ正式会員になっていない高校生が数名いるそうです。「若い頃は、練習で自分の時間が取られるので嫌でした。長男でなければ、とも思いましたが、選ばれた者しか舞うことができない神楽なので、だんだん誇りに思えてきます」と伊藤さん。「外部の者を入れず、誰もができるものにしなかったので、ここまで長い間、残ってきたのかもしれません」。 |
早池峰神楽の特徴をお聞きすると「真言密教の祈祷の所作が入っていること、動きは時計の針と同じ右回りと決まっています。能が生まれる以前の芸能です。演目は40種類ほどあって日本書紀を題材にしたものが多いですね。神様に捧げる『神舞』の他に、歴史上の著名な人や出来事を題材にした『番楽舞』もあります「神楽を舞うのは1名から4名が基本で、この他に伴奏の太鼓1名と鉦2名、舞台の幕の裏に笛と唄をうたう人が入ります。最初にネリ(練り)と呼ばれる祈祷の所作が入った舞を面を付けて演じます。これが終わると唄が入り、その後で面を取ってクズシ(崩し)と呼ばれるあでやかな舞を演じます。この舞は、神様への感謝を表しているそうです。
神楽は早池峰神社のお祭りやお祝い事の他、各地のイベントなどでも披露されています。今年の公演数は70を超えるとか!練習に費やす時間を加えると、大変なご苦労であることがわかります。しかし、保存会の皆さんの表情からは、郷土の伝統を自分たちが受け継ぎ、伝えていくという大きな誇りと喜びを感じました。