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葛城奈海の森林のよもやま話-14- 保存会の練習風景。演目は「稲田姫」、八岐大蛇のお話です。

早池峰(はやちね)神楽の巻

都会と違って、様々な伝統芸能が今も残っているのが山村地域の魅力です。 Iターンで山村に定着した「緑の研修生」の中には、お祭りのときの獅子舞や笛囃子を習い、 地域にとけ込んでいる方もいらっしゃいますね。
しかし、伝統芸能を後世に伝えるには様々なご苦労もあるようです。 今回、私が訪れたのは、平成21年9月にユネスコ無形文化遺産に指定された 早池峰神楽(岳神楽)保存会の皆さまの練習場です。

500年もの伝統がある早池峰神楽を誇りを持って守っている人たちがいます。

北上山地の最高峰である早池峰山は、古くから霊山として信仰の対象となっていました。早池峰山には、4つの登山口があり、かつてはそれぞれに山伏が坊院を構えていました。岳地区もそうした登山口の一つで、神仏混淆の時代には、新山宮という神社とその別当寺として妙泉寺がありました。 しかし、妙泉寺の方は明治維新の廃仏毀釈の際に廃寺となりました。新山宮は、今では早池峰神社となっています。早池峰神楽は、この妙泉寺に伝わる神楽です。

※坊院…僧侶の住居のこと。
早池峰神楽保存会
伊藤金人さんと。

昔は4つの登山口、それぞれで神楽が行われていましたが、今残っているのは早池峰山の南西側の岳地区と南側の遠野市、大出(おおいで)地区、東側の宮古市川井地区の3つだけ。保存会の伊藤さんによると「起源は定かではありませんが、文禄4年(1595年)の権現舞の面が今も残っているので、少なくとも500年前には神楽が舞われていたのは確かです」とのこと。

■ 早池峰神楽に使うお面

子山の神
(こやまのかみ)
三番叟
(さんばそう)
武内宿禰
(たけのうちのすくね)
巨旦
(こたん)

神楽は、妙泉寺に仕えた門前に住む『六坊職』の人たちによって伝承されてきました。今でも『六坊職』の末裔である6軒と神職に関わる4軒の合計10軒によって保存会が作られ、伝統を守っています。神楽を舞うのは、この10軒の長男だけに許されることなんです!

週に何回か集まり、
夜遅くまで練習を重ねています。

保存会の会員は16名、最年長は76歳で最年少は20歳。まだ正式会員になっていない高校生が数名いるそうです。「若い頃は、練習で自分の時間が取られるので嫌でした。長男でなければ、とも思いましたが、選ばれた者しか舞うことができない神楽なので、だんだん誇りに思えてきます」と伊藤さん。「外部の者を入れず、誰もができるものにしなかったので、ここまで長い間、残ってきたのかもしれません」。

早池峰神楽の特徴をお聞きすると「真言密教の祈祷の所作が入っていること、動きは時計の針と同じ右回りと決まっています。能が生まれる以前の芸能です。演目は40種類ほどあって日本書紀を題材にしたものが多いですね。神様に捧げる『神舞』の他に、歴史上の著名な人や出来事を題材にした『番楽舞』もあります「神楽を舞うのは1名から4名が基本で、この他に伴奏の太鼓1名と鉦2名、舞台の幕の裏に笛と唄をうたう人が入ります。最初にネリ(練り)と呼ばれる祈祷の所作が入った舞を面を付けて演じます。これが終わると唄が入り、その後で面を取ってクズシ(崩し)と呼ばれるあでやかな舞を演じます。この舞は、神様への感謝を表しているそうです。

神楽は早池峰神社のお祭りやお祝い事の他、各地のイベントなどでも披露されています。今年の公演数は70を超えるとか!練習に費やす時間を加えると、大変なご苦労であることがわかります。しかし、保存会の皆さんの表情からは、郷土の伝統を自分たちが受け継ぎ、伝えていくという大きな誇りと喜びを感じました。

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