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釜石地方森林組合

釜石地方森林組合は岩手県の南東部、陸中海岸国立公園(現 三陸復興国立公園)の中心に位置し、
世界三大漁場の1つ、三陸漁場と典型的なリアス式海岸を持つ風光明媚な土地であるが、
2011年の東日本大震災で被災し、津波により事務所も大きな被害を受けた。
現在は旧貯木場として利用していた内陸に事務所を新築し、釜石地域の森林保全はもちろん、
間伐材を利用した新住宅向けの建材供給を行っている。現事務所の2階には地元材で作った復興住宅プロジェクトのモデルルームを併設し、
建築家と地元森林組合がコラボした例として注目されている。

釜石地方森林組合

岩手県釜石市鵜住居町第3地割8-3
TEL:0193-28-4244

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菅野 寿文

菅野 寿文(かんの としふみ)さん
24歳 フォレストワーカー3年目
所属
釜石地方森林組合
家族
妻・子ども(高校生・中学生・小学生)
趣味
資 格
自動車(普通・大型・大型特殊) 普通救命 刈払機 伐木造材 玉掛け
車両系建設機械 小型移動式クレーン 不整地運搬車 林内作業車
はい作業従事者 機械集材装置

転職のきっかけはハローワーク。
直感で「山仕事」をやりたいと決めた。

菅野さんの仕事は朝8時に始まる。山での仕事は日が沈むまでの間が勝負。組合が管理する山林に入って、12時から1時間の昼休みをはさみ、17時頃まで現場での作業をおこなう。その後事務所に戻って、コスト分析などの事務作業と翌日の下準備をして18時頃には退社するという規則正しいサイクルだ。
「私が林業に興味を持ったのは3年ほど前。ハローワークで森林組合の求人を見つけたのがきっかけです。外で汗をかくことが好きだったので、自然と触れ合い、山で木を切って運び出す仕事は魅力的に感じました」と。菅野さんの前職は、通信設備の工事関連。電信柱に上って機器の取り付け等を行なう外仕事だったこともあり、共通点を多く感じたことも転職の後押しになったと言う。

気を抜けば危険も伴う伐倒作業だが、
やり遂げた感動は他では味わえない魅力がある。

慎重さが求められる高所で仕事をしていた菅野さんは、「地面に足をつけて作業する山での仕事は危険度合いも今までより低いのでは、と高をくくっていました」と3年前を振り返る。「山をなめていたのかもしれませんね。仕事を始めたばかりの時、危ない経験をしました。それ以降、念には念を入れ、周囲の状況を確認し、一度落ち着いて判断してから作業するようにしています」と。伐倒するとき、残す木を傷つけない方向を見定める。そしてチェーンソーで切り込みを入れ倒していく。「林業の醍醐味は、思い通りの方向へ木を倒すこと。これが第一です。倒した木が大地と一体化したとき、獲物を捕らえたときのような感動が身体の中から湧いてきます。」

気を抜けば危険も伴う伐倒作業だが、やり遂げた感動は他では味わえない魅力がある。
急勾配の現場でチェーンソーを持ち、伐倒の準備をする菅野さん。

林業の醍醐味は、何ごとも変えることのできない満足感だ。

「山から木を切り出すのは、最初、自然を壊すイメージがありました。それは、まったく逆の考えだったことが実際に作業をしてわかりました」と語る菅野さん。「間伐すると、残った木々に新芽が芽吹き、木々の間に陽が当たることで大地に栄養が行き届いて、山が活性化して元気になっていきます。その現場で働けることが楽しくて、とにかく林業は感動します」と。自分の手で山を育てることは、地元の自然、日本の自然、世界の自然を守ることになり、私たちの未来を作っている実感があると続けた。さらに、「自然と一体になってできる仕事は、何ごとにも変えることのできない満足感が得られる。林業はまさにそれだ」と菅野さんは語る。菅野さんにとって林業は天職なのだ。

林業の醍醐味は、何ごとも変えることのできない満足感だ。
急勾配から切り出された木々は集約され、重機で運び出される。

父の働く姿を見た息子が見つけた自分の夢。

もともとが口下手な菅野さん。子どもたちに自分がどんな仕事をしているかを分かってもらいたくて、休日に自分の仕事現場を見せていた。「私は家族を安定して養うために林業に転職しました。この前、中学生の息子から卒業したら漁師になりたいって聞かされました。オヤジが林業で栄養のある水を作ってくれるから、僕が漁師になって海から美味い魚を捕ってくる」と。山の芳醇な水が海に注ぎ込むことで、海が生き、豊かな恵みを創り出す。山と海はつながっていると言うことを学んだのだ。それを聞いたときに飛び上がるくらい嬉しかったと言う菅野さん。業種は違うが自然に関わって仕事をする親子の未来を笑顔で語ってくれた。

父の働く姿を見た息子が見つけた自分の夢。
年齢が近い菅野さん(左)と阿部さん(右)。職場の皆とは和気あいあいとして、仲がいいと言う。

阿部 武英

阿部 武英(あべ たけひで)さん
20歳 フォレストワーカー2年目
所属
釜石地方森林組合
家族
妻・子ども(高校生・小学生)
趣味
高校野球観戦
資 格
自動車(普通) 普通救命 刈払機 伐木造材 玉掛け 車両系建設機械
小型移動式クレーン 不整地運搬車 林内作業車 はい作業従事者 機械集材装置

建設業で長年培った技術を活かし、
安定した収入を求めて林業へ転職。

生まれ育った岩手県で建設関係の重機オペレーターを勤めていた阿部さん。4~5年前の建設業界は春先になると仕事量が不安定になる「不況」だった。子どもの進学などを考えた時、生活を安定させたいとの思いがあり、知人を介して林業就労を知る。林業の知識と仕事内容を知るために、まず釜石市が実施した“緊急雇用対策事業”に参加。「林業にも重機の導入が多く、これなら自分が建設業で培ってきた重機のオペレーション技術が活かせる」と転職を決心し、釜石地方森林組合に就職。現在は、フォレストワーカー(以下FW)2年目として、日々気持ちの良い汗を流している。「前職の建設現場は、いつもホコリが舞い上がる中で働いていたのでマスクは必携、呼吸すること自体がきつい現場も多かった。でも林業の現場は全く正反対。自然な山の中で作業するから空気は格別です。仕事はハードな面もありますが、澄んだ空気の中で仕事ができるのは健康的で、毎日の昼ごはんもおいしい(笑)」と語った。

チェーンソーの資格は何より必須。
仕事をしながら資格取得ができるのが嬉しい。

緊急雇用に参加した当時40歳の阿部さんは「林業はこの歳の自分には結構肉体的に厳しい仕事なのではないかと思いましたが、現場では重機での作業も多いので安心しました」と。実際に林業の重機を操作する段階になると、建設業の重機とは若干操作方法は違っていたが、コツさえ掴めば上達も早い。「仕事しながら資格や研修を受けられるので、現場の作業に慣れるのにも時間はかからなかった」と語る。現在FW2年目の阿部さんは、資格の大半を取得するほど林業にのめり込んでおり、日々その技術を高めている。

チェーンソーの資格は何より必須。仕事をしながら資格取得ができるのが嬉しい。
伐倒作業は何よりも安全確認が大事だと話す阿部さん。

「木」から「木材」へ。
林業という仕事への誇り。

林業のやりがいを聞くと、「林業という仕事は、自らが山に入って自分の手で木を切ってみないと、その素晴らしさを実感しにくいかもしれません。仕事自体はとても緊張しますが、伐倒がうまくいったときの達成感は、他とは比べものにならないほど感動します。」と語る。さらに「伐倒することで、何十年も育っていた木が新しく木材へと生まれ変わっていくのです。だから、より良い木材として出荷させるという意識が、私たち現場の人間には必要です。」林業という仕事に誇りを持つ阿部さんの心意気が伝わってきた。

「木」から「木材」へ。林業という仕事への誇り。
同僚の菅野さん(右)と雑談する阿部さん(左)。子どものことや野球のことなど、話しは尽きない。

伐倒だけが林業ではない。
ぜひ、一度現場に。

林業に少しでも興味を持ったら一度現場に来る事をすすめる阿部さん。「現場に来るだけでも今まで知らなかった林業が少しでも感じられるはずです。自分は40歳からの転職組ですが、もっと若いときに林業を知っておきたかった」と語る。
「林業は数十年の周期で植林、管理していく息の長い大仕事です。木を伐倒するだけが林業ではないんです。森と大地を!水と空気を!自然に欠かすことのできない役目を担っています。」林業の究極の目的。それは、子どもたちの未来へ、豊かな自然を残すことなのだと続ける阿部さんの目は輝いていた。

伐倒だけが林業ではない。ぜひ、一度現場に。
山の中に入ると、木々からこぼれる柔らかい陽射しと木々の緑が美しく、空気が美味しく感じられる。

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