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森林の仕事ガイダンス

2019年1月19日開催 梅田クリスタルホール会場
フォレストリーダートークショー

登壇者

葛城奈海さん(以下、葛城):さてここからはですね、林業の世界に入り、ここまで木が年輪を重ねるように経験を積んでこられた方に登壇いただきまして、ご自身のステップアップの過程での出来事をご紹介していただきながら、手に入れることができた充実感ですとか、林業という仕事の価値や意義についてお話を伺っていきたいと思います。皆様が林業に携わり10年先、20年先を思い描くヒントになれば幸いです。
それではさっそくご登場いただきましょう、奈良の黒滝村森林組合からいらっしゃいました梶谷哲也さんです。どうぞ大きな拍手でお迎えください。

(会場内拍手)

葛城:こんにちは。

梶谷哲也さん(以下、梶谷):こんにちは。

葛城:梶谷さん、お久しぶりです。

梶谷:どうもお久しぶりです、はい。

葛城:実は梶谷さんには、その昔よく森林の仕事ガイダンスにご登場いただきまして、チェーンソーアートの作品、今日もすでにステージの両サイドに飾っているんですけども、その実演などもしていただいておりました。なので結構長い付き合いですよね。

梶谷:そうですね、はい、本当に長いですね。

葛城:久々にまたガイダンスでお会いできて大変うれしく思います。

プロフィール紹介

葛城:それでは梶谷さんのプロフィールをまずご紹介したいと思いますが、(スクリーン上にプロフィール表示)ご覧のように、今年ちょうど20年になるんですね。

梶谷:そうですね、僕も気づいたら20年で、平成10年から仕事をしています。

葛城:そうでしたね。そして、奥様と長男長女という家族構成となっていますが、実は今日はかわいいお坊ちゃんとお嬢ちゃんが来ていただいてるんですね。

梶谷:うちの長男と長女が来ているんです。

葛城:趣味・特技のチェーンソーアートについては、また後程ゆっくり伺っていきたいと思います。さて、梶谷さんは現在黒滝村森林組合で具体的にはどんなお仕事をされているんでしょうか。

梶谷:そうですね、黒滝村森林組合というのはですね、奈良県の吉野林業ということで、吉野杉とかそういう言葉は聞いたことある方がいるかなと思うんですけれども、そこの吉野杉を育てている吉野林業地帯というところに僕の森林組合はあります。そこで森の手入れですね、木の伐採や森作り。それこそ吉野杉といわれるような材をですね、育てて市場に出しているという感じです。

葛城:という、現在の梶谷さんなんですけれども、元々は東京の方なんですよね。

梶谷:はい、僕は東京出身で商業系の大学を出て、Iターンで林業にいきなり飛び込んでもう20年になります。

葛城:なんで吉野って思ったんですか?

梶谷:僕は本当に林業の「り」の字も知らなかったので、でも吉野杉とか吉野林業っていう言葉は社会で習って知っていたんですね。なので、あのネームバリュー?ブランドみたいな吉野なら大丈夫なんじゃないかみたいなミーハーな心で選びました。

葛城:実は黒滝村にも伺ったことがありましてね、その時地元の方が言ってたんですけども、梶谷さんにとってはやっぱり吉野林業はブランドって今も仰いましたけれども、地元の人にとっては当たり前のように、スギが生まれた時から身の周りにありすぎて、ありがたみも何も感じてなかったのに、東京から来た、貴公子のような人がすごく褒めてくれてうれしかったって。

梶谷:でも、本当に地元の方は当たり前の姿ですけれど、僕にっては本当毎日が新鮮でしたね。

葛城:なるほどね、そんな梶谷さんの20年間の歩みを振り返ってみたいと思います。年表をご用意させていただきました。

林業就業のきっかけとチェーンソーアート

葛城:まず、24歳で今仰ったような黒滝村森林組合に入られたわけですけれども、具体的なきっかけっていうのはあったんですか?

梶谷:えっとですね、小さいころから木が好きで、木の香りとか。森っていうのは僕の住んでいるところには全くなかったので。僕は東京の特にディズニーランドの方ですね、沿岸部、お台場とかディズニーランドとか、そっちにいたので、全然森に縁とかなくて。ただ木の香りとかイメージで好きだったので、木に関係する仕事に就きたいなとずっと思っていました。

葛城:そうだったんですね、始めて4年でチェーンソーアートの彫刻を始めたわけですけれども、このきっかけは?

梶谷:村に入って仕事をしてみて・・・切り捨て間伐っていう言葉が今日フォレストワーカーの方からもあったんですけども、山に木をそのまま間伐して、山から搬出しないっていうことがありまして。僕からしてみたらそんなヒノキとか、吉野杉っていうのをそのまま山に捨ててしまう、まぁ捨ててしまうというか置きっぱなしにしてしまうのが、すごくもったいないことで、その間伐材をなんとか生かせないかなとずっと思っていたんですね。それで、知ったのがチェーンソーアート、チェーンソーで彫刻する技術ですね。(スクリーン上彫刻風景等の写真が表示)

葛城:いやー本当に素晴らしい作品をたくさん作られてるんですけれども、難しかったんじゃないですか最初は?

梶谷:僕ね自分でできるんじゃないかと思ってましたね。まぁチェーンソーはとにかく仕事道具で使えるので。あと丸太はいくらでも山に転がっているので、練習すればできるんじゃないかと。(ステージ上のチェーンソーアートを指しながら)で、これは全部本当にチェーンソーだけで作ってますんで、犬とか。

葛城:すごいですよね、やっぱり私も何年も見ている間にどんどん進化されていて。この色付け具合とか、最初はこんなに凝ってなかったですよね。

梶谷:そうですね、これも焼いてるんですよね。ちょっと目とかは塗ってますけど、これはバーナーで焦がして、このフクロウもバーナーで焦がしてですね。

葛城:いや、絶妙なこのグラデーション。

梶谷:そうですね、だからこういうのもやっぱり僕は普段から木に接しているので、その木の良さっていうのかな、その木目とか年輪とかを生かしたデザインを心がけています。

葛城:見事に生かしてらっしゃいますよね、この木目とか年輪がちょうど羽毛のように見えますもの、あっちだったら毛並みに見えるし、すばらしいですね。あとこのね(スクリーン上の写真を指して)今出ている写真についても、ぜひ細かいことまで伺いたいんですけど、これ場所はどこなんでしたっけ。

梶谷:これはね、小笠原諸島の母島というところになります。

葛城:で、使っている木は。

梶谷:アカギという木になりますね。

葛城:アカギは実は外来種ということで厄介者で、やはり駆除というか伐採の対象なんですよね。

梶谷:小笠原では世界自然遺産になったこともありまして、こういう外来樹木を今除伐する仕事が行われています。そこに僕も黒滝村森林組合に所属しながら、そういう技術が必要だということで、小笠原に仕事の手伝いに行ってですね、アカギを伐採してその有効利用として、こうやって彫刻をしました。

葛城:そうだったんですね。で、実は私この本物を母島で見たんですよ。行ったときに船着き場のちょうど船を降りたら、真正面にまさにこのワンちゃんが飾られていて、すごい感動しました。もちろん梶谷さんが母島に関わっておられてチェーンソーアートやっておられるのは知っていたので、『あっ、梶谷さんの作品とここで出会えちゃった』みたいなね。

梶谷:でね、すぐに葛城さんから写真が送られてきて、それは僕の作ったこの犬が僕の名前でタグづけされて、写真で送られてきて、もう思い出ですね。

葛城:それぐらい活躍されている梶谷さんです。

「緑の雇用」研修とブログの開始

葛城:では、年表に戻ってみましょう。そしてそして、29歳でいよいよ「緑の雇用」研修一期生となり様々な技術を教えてもらうとありますが、具体的にはどんなことを教えてもらったんですか?

梶谷:そうですね、それまでに5年間くらい、森林組合の中で林業をしていました。まあもう昔だったので、本当に見て覚えろみたいな世界だったんですね。それがこの「緑の雇用」が始まったおかげで、いろんな講師の先生達にいろんな技術とか山の話を教えてもらうことができました。

葛城:やっぱりこう、組織の中だけじゃなくて、いろんな方と接すると違いますか?

梶谷:そうですね、なかなかやっぱり林業も狭い世界で本当に仕事が限られているというか。僕は奈良県の支援センターみたいなところで、研修を受けていたんですけれども、その県の方もいろんな講師の先生を意識して呼んでくれるので、『こういう仕事もあるんだな』『こういうこともやってみたいな』っていう感じで本当に勉強になりました。

葛城:視野が広まったって感じなんですね。では、続いて梶谷さんの林業就業7年目から13年目までの歩みを振り返ってみたいと思いますが、そうそう情報発信の手段としてブログ『出来杉計画』を始められたんですね。

梶谷:はい、林業のワードで検索したら出てくると思うんですけど。

葛城:これ、きっかけは何で始めたんですか。

梶谷:これまだ僕が林業を始める時には、インターネットってものがねほとんどなかったです。まだパソコン通信っていう時代で、皆さんわかんない方も多いと思うんだけど。ブログっていうのがちょうどこのころ始まったんですよね、そういうサービスが。それまでは林業の情報というのは本当に無かったです。ネットで調べても出てこない、でも僕はそういう情報に飢えていたので、それならもう自分で発信しようと思って、いろんな情報を自分から発信するようにしました。

葛城:具体的にはどんな内容を発信されてるんでしょうか。

梶谷:例えば、今僕が身に着けているのはアウトドアメーカーのモンベルの林業のグッズなんですけれども、こういうものを実際に購入して、使ってみた感想とか、本当に新しい海外の伐倒技術とか、こういう林業の本が出てますよとかですね。例えば枝打ち、僕はこういう風に枝を打っていますとか、皆さんはどうですかとか、そういう形をブログで情報発信しています。

葛城:そうなんですよ、本当に実際に役に立つ内容を発信してくださってるので、ファンも多いですよね。

梶谷:ええ、今日も半日ここにいたら、ブログ見てますっていう風に声を掛けられたりしてですね、本当に影響大きいなと思っています。

葛城:なるほどなるほど、これまでに特に印象に残ってる出来事って、何かあります?

梶谷:やっぱり、こういうところに来ると『あっ梶谷さんがこの出来杉計画ってのを書いてるんですね。』っていう形でいろんな方から声を掛けられて、そしてまたいろんな情報を教えてもらったり。『今はこういうの出てるけど梶谷さん知ってますか』とかですね、本当に普段なかなかない交流っていうのがですね、あとメーカーさんから声をかけていただいたりとか。この商品使ってみてくれませんかとかですね、普段山奥で林業してるだけじゃ出会えなかった人たちと出会えることができて、これもネットの力ってすごいなって思います。

葛城:でも、メーカーの人たちにとってもありがたい存在だと思うんですよね。梶谷さんがいいと言ってくれたら本当にいいんだということで、皆さんの信頼度もググっとアップするでしょうから。

梶谷:責任重大ですね。

葛城:他に何かブログをやっていたからこそ得られたことってありますか?

梶谷:そうですね、僕はブログで文章書くので、これをきっかけにしてですね、林業の出版社からちょっと声をかけていただいて、いろんな全国の林業地を回って、その現場で見たことをレポートみたいなのを書く仕事もしていまして、本当に日本は広いなと、今日も32道府県ブースが出てますけど、地域性が林業ってあって、地域豊かで日本って広いなと思いながら、いつも取材に行ってます。

子供が生まれてからの生活や周りからの支援

葛城:なるほどね、ではまた年表に戻ってみましょう。さぁいよいよ長男さんと長女さんが誕生しました。

葛城:ご家族を得て、何かご自身の生活の中で意識の中で変わったことってあると思うんですけど、一番大きなことって何でしょう。

梶谷:僕は黒滝村森林組合と言いましたけれども、村の人口が700名ぐらいなんですよ。もう子供の数って言ったら小学校…はないんですようちの村。

葛城:あ、ないんですね。

梶谷:小学校と中学校が一緒になってて

葛城:じゃあ結構遠くまで通わないと

梶谷:あ、というか黒滝小中学校っていうね、もう合併してるんですよ。小学校単独ではなくて、小中学校が合併してて、それでね生徒数が20名ぐらい。

葛城:小中で?そうなんですか。

梶谷:小中で。9学年あって20名ぐらいなんですよ。それぐらい人も少なくて、っていうところなんですね。で、すごい子どもを大事にしてくれる、もちろん僕たち親も大事にしますけど、学校の先生もすごく大事にしてくれるし、村の人たちもすごく子供たちには手厚くてですね、東京からわざわざこんな小さい村に来て、やっぱり山の手入れをしてくれていると、そういうのを村の人がみんな分かってて、子供たちにもすごく手厚く、まぁ僕だけじゃないですね、他の森林組合のメンバーもみんな子供がいるので。

葛城:手厚いっていうのは、たとえば具体的にどういうこととか。

梶谷:まず、給食費はかからないです、村が全部持ってくれます。あと、教科書代とかも無いです、全部村が購入してくれる。あと修学旅行とか、病気の保険とかはね中学生までは無料ですし、子供にかかる費用とかは何もなくてですね、全て村が面倒見てくれてますね。

葛城:なんか田舎に行けば行くほど子供を育てるのは大変なんじゃないかって思っている方もおられると思うんですけど、逆?

梶谷:そうですね、よくテレビとかだと子供が山道を30分歩いて学校に行くとかあるけど、いやもう家の前までバスが迎えに来てくれるので、それに乗ってみんな学校に行ってます。だから、逆にあんまり歩かなすぎて運動不足になるんじゃないかなっていうぐらい、もう本当に手厚いですね。

葛城:そうなんですね、結構その話はびっくりしました。

災害予防のための特殊伐採

葛城:では、続いての年表に行ってみましょう。林業就業から14年目から現在までですね。ロープを使って樹上で伐採を行う「特殊伐採」を始めるとあります。特殊伐採って皆さん分かりますかね。例えばこんなことなんですけど、すごい高いところにいますね。

梶谷:特殊伐採は普通に地に足を付けて木を切るのではなくて、特殊な状態・特殊な環境で木を切るというので、特殊伐採というような言い方をしています。このようにですねロープで体を保持して落下しないようにして、こういう環境で木を切っているということですね。

葛城:向かって左側の写真なんて、これ高さどれぐらいのところまで登ってるんですか。

梶谷:これ多分30m弱ぐらいまでは多分上がってると思うんですよね。これスギの木ですね。

葛城:あっ思い出しちゃいました。すごい木登り上手でしたよね。

梶谷:あそうそうそう。はい、そうなんですよ。

葛城:しかも奥様が黒滝村の方なんですけど、見初めたきっかけが「そまびと選手権」だったかな?

梶谷:そうですそうですね

葛城:なんか木登りとか山作業をする大会で、人間業とは思えないような動きをしていたんですって、木の精霊みたいな。それで惚れちゃったって言ってたの思い出しちゃいました。

梶谷:そうですね、ああやっぱり奈海さんすごい優秀ですね、さすがによく覚えてる。

梶谷:うん、でねこのスギの木に登っているのは、家の屋根が見えていますけども、もしこの木が倒れてきたら危ないですね。なので、そういう事前に倒れてきたら危ないような木を切っておく。予防ですね、災害の予防。で、こういう仕事がすごく日本全国で増えています。やはり台風とか集中豪雨とかすごいので、災害を未然に防ぐっていう意味でこういうのが増えているんですよね。

葛城:なるほどね、で、右側の写真も非常に微妙な場所というか、これ切った後の上の部分っていうのも、吊って落っこちないようになっているってことですよね。これ、ひっかけてますもんね。

梶谷:そう、クレーンが。神社なんですよ、この木すごい前に傾いてるじゃないですか、下にお社があってやはりこれも危ないと、なので倒れてきそうだから事前に切っておくということで、クレーンを使って吊り切りのような状態で、吊ってもらいながら今切っています。

葛城:こういうのは一人だけでやっているんですか。何人か仲間がいて一緒にやっているんですか。

梶谷:これは班ですよね。こういう特殊伐採をする班というのを作っていまして、僕ともう一人同じようなスキルを持った人がいるので、基本的には二人で班を作って、事前に危険を防止するような作業をしています。

葛城:かっこいいですね。

「緑の雇用」研修でのキャリアアップ

葛城:では年表に戻りたいと思います。その後42歳でフォレストリーダー研修に参加。具体的にはどんなことを学びましたか?

梶谷:このフォレストリーダーっていうのはですね、「緑の雇用」で最初フォレストワーカーというのに従事して3年間、現場の経験を積んで班長さんクラスっていうのかな、そういうふうな状態になるとこのフォレストリーダーっていうのに参加します。これは僕は奈良県なので、和歌山・京都・兵庫県とか近畿圏の班長さんクラスの方たちが集まって合同で研修をします。

葛城:それになると、仕事の内容っていうのはどんなふうに変わるんですか?

梶谷:現場で働くんじゃなくて一つ班をまとめる人達が集まってですね、それなりの研修っていうのかな、安全管理とかそういった面のいろんな研修を受けます。

葛城:なるほどね、安全管理。自分のだけじゃなくて班みんながちゃんと安全に作業できるように、大事なことですね。そして44歳で今度はフォレストマネージャー研修に参加、これはまたどう違うんですか?

梶谷:このフォレストマネージャーというのは、またさらにリーダーからまたちょっと一歩上がるというか、大体現場で10年・15年・20年ぐらいの方がですね、複数の班を取りまとめるような立場というのかな、マネージャーというので。より経営者じゃないですけれども、より班をまとめてですね、もっと全体を見るような、きちんと安全管理できてるかとか、班の仕事の状況が進んでるかとか、そういうのを見るような立場になります。

葛城:より広い視点で全体を管理するというか、まとめるお立場になられたのですね。そして同じく44歳の時に森林インストラクターに合格とありますが、これは最近よく聞くんですけど、具体的にはどんな事なんですか?

梶谷:これは民間の資格になるんですけれども、森林、林業あと安全・・・野外活動か、という4科目があってですね、それを合格すると森林インストラクターという立場で、森の自然の案内をしたり自然観察とか、いろんなそういう活動ができるようになります。

葛城:まぁお仕事も生かしながら、より一般の人に森林や林業などなどの良さを伝えていくというような認識ですか?

梶谷:そうですね、はい。僕もずっと林業をやってきて、やっぱり森の良さっていうのを色んなところで感じること多いんですね。で、今度は僕が20年得てきたものを、より多くの方に伝えられたらいいなと思って、この森林インストラクターという資格を取りました。

葛城:なるほど、ますますご活躍の幅が広がりそうですね。

誇りを持てる仕事

葛城:さて続いては、今の社会やこれからの未来にとって、梶谷さんが今この林業という仕事をしていて、誇りを持てるのってどんな時かな、っていうことを聞いてみたいと思います。例えばどういうときに誇りを感じますか?

梶谷:そうですね、吉野という地域がちょっと特別かもしれないですけれども、やはり150年生とか200年生とか、そういったすごく大きな木が山に残ってますね。

葛城:そういうのは切るのも大変でしょうね。

梶谷:やっぱり緊張します。1日で切るのは1本とか2本です。信じられないと思うけど、まず山に行ったらみんなでお祓いじゃないけど、木をお清めして、ちょっと一服して、それで準備にかかって、1本倒すのに受け口とか何回も確認しますし、すべてを確認してゆっくり切ります。(スクリーン表示)これは実際スギではなくてまた別の木になるんですけども。これはチェーンソーの排気量が120cc。

葛城:これ半端じゃない長さがあるんですけど、長さはどれぐらいなんですか。

梶谷:これね、ガイドバーというチェーンソーの刃の長さが120cmですね1m20cm。

葛城:120、ってことは相当重さもありそうですよね。

梶谷:顔があまり写ってないけど、結構歯を食いしばっている感じですね。

葛城:無理もないですよね。でも150年っていう木になると、ちゃんとお祓いみたいなことをして、木に敬意を表してから切っているのも大切なことだな思います。

梶谷:そうですね、僕たちは切っているだけなんですよ。森をこの木を育ててくれた方がやっぱりいるんですよね。150年200年前って言ったら江戸時代とか?

葛城:明治維新150年ぐらいじゃないですか。

梶谷:あっ明治維新か。だからそのころにちゃんと木を植えて手入れをしてくれた方がいるんですよね。やっぱりその木も大事だけど、そうやっていい仕事をして、僕たちに木を残してくれた先人たちにも、ここで下手な切り方して木を割ってしまったりとか、木が裂けてしまったらもう終わりなので、大事ですよね。

葛城:そうか、そういうことも思いながら、祈りを込めて切ってらっしゃるんですね。そういう立派な木っていうのは、例えばどういう場所で使われるんですか?

梶谷:奈良県であれば、平城京の遺跡のところで今大極殿とかを作ってるんですけど、そういう柱に使われたりとか。あと、鳥居ですよね、明治神宮の鳥居とか、今だったら名古屋城の本丸をね、木造でするって決まったので、そこの木を入れたりとか、そういうほんとに日本の文化っていうのかな、昔ながらの日本の文化を支える、だからいま誇りの持てるってあったけど、僕たちはそういう日本の文化を支えるような森づくりっていうのをしているんだという思いがありますね。

葛城:素敵ですね、わたし実は小学生のころだけ奈良に住んでいたんですけど、遠足でよく行ってたのが平城宮の跡で、そのころはほとんど何にもなかったんですよ。でも今は大極殿が建てられて、そこに使われている木は梶谷さんたちが切ったその大木なんですね。

梶谷:そうですね。何本か木はあるんですけど、右から何番目はどこの村から出たとか全部わかるので、大体みんなが行くと『これはうちの村から出た木や』とかね、そんな感じでみんなと話して、やっぱり山に関わる人はみんな誇りですよねこういうのが。

葛城:ですね、俺らが切ったんだぞっていうね。かっこいいです。さぁ、これからの林業こんなふうにしていきたいっていう、何か希望とか思いはありますか?

梶谷:これからの林業というか、僕はさっき言ったように森林インストラクターというの取りましたけども、やはり森の良さっていうのかな、山で仕事してると気持ちいいし、やりがいのある仕事だと思うんですね。僕も安全第一で現場で働くのももちろんですけども、いろんな方にその木の良さとか、そういうのを知ってもらってですね、より林業のファンというか森のファンていうかね、そういうのを増やしていきたいなという思いはありますね。

葛城:梶谷さんみたいな方が活躍されたら、林業ファンはじゃんじゃん増えるような気がしますけれども。

梶谷:ありがとうございます。

葛城:では、最後にご来場された皆さんにアドバイスやメッセージがあったらお願いしたいと思います。

梶谷:そうですね、僕も20年間やってきて、森のことは何も知りませんでした、僕東京でほんとに何も知らなくて、今小さい村に入って林業してて、日々充実してます。もう安全第一ってのは間違いなくて、危ない仕事であることは間違いないんですけれども、ほんとに日々充実していて、天気がいい日に外で働ける、それだけで最高じゃないですか?まぁ花粉症の方ちょっと辛いかもしれないけど、ほんとにいい環境でいい仕事させてもらってて、さっき言ったように誇りの持てる仕事だと思いますので、ぜひ皆さん森林の仕事ガイダンスでいいご縁があるといいなと思っています。

葛城:はい、もうほんとにこの梶谷さんの目の輝きっぷりが、その林業という仕事の充実感を如実に語ってくれているような気がいたしました。梶谷さんほんとに貴重なお話をありがとうございました。

梶谷:ありがとうございました。



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